七十二候をおいかけて

日本の四季をさらに細かく区切った七十二侯。ひとつずつ知っていきたいと思います。

春のかおり【1.東風凍を解く】

 

東風凍を解く

立春 2月4日~2月8日
◆初侯:東風凍を解く(とうふうこおりをとく)
◆侯のことば:東風。
東風とは春風のこと。「春風」というと南から吹く暖かい風なのになぜ「東風」というのかというと、七十二侯が元々中国からやってきた暦であることにさかのぼります。中国で使われる陰陽五行の思想で春は「東」を司ることからきているのだとか。
◆侯の野菜:ふきのとう。
春の山菜としても有名なふきのとう。ゆでたものをすりつぶして味噌や砂糖みりんとまぜた「蕗みそ」が美味しいですよね。

 

***

 

旧暦では2月4日、この日から新しい一年が始まります。

今日から七十二侯それぞれの言葉や旬のもののなかからちょっとしたひとりごとを綴っていってみようかと思います。

ゆるりと更新してゆきますので、どうかゆるりとお付き合いいただければと思います。

 

***

 

春のかおり

 

香りって特別だと思う。

五感のなかで多分わたしは「嗅覚」がいちばん敏感だ。

だから「いいな」と思う香りの人をすきになることも多いし、特別になった人の香りはなかなか忘れられなかったりして、それが原因で嬉しくなったり、少しだけ切なくなったりもする。

誰かのおうちにお邪魔するときも、一歩入った瞬間に漂ってくるその人だけのおうちの香りに包まれることも距離が縮まったように感じられてすきだ。

そんな香りフェチのわたしだけど、季節の変わり目に感じる「新しい季節の香り」はやはり格別だなと毎回思う。

夏は太陽の少し焦げるような香りや、プールの塩素の香り。

金木犀が香ってくると「秋が来たなあ」と感じるし、そのあとに踏みつぶされた銀杏のなんとも言えない香りでもうすぐ冬が来るな、と思う。

枯葉の落ちて踏まれたあとの葉の香りや、ツンとしたとげのある冷たさが玄関の扉を開けた瞬間に、ひゅんっと鼻に抜けてきてすっかり冬を感じてしまう。

そんななかでも春の訪れを教えてくれる香りというのは、他のどの季節よりもわかりやすいのではないかと思うのだ。

暖かくてどことなく花の甘い香りがそよそよと髪をゆらして…そんな優しい風が、春が来たよと教えてくれる「春風」なのかなと思っている。

おこもりが捗る冬とは違って、外を歩きたくてついうずうずしてしてしまいたくなったら春が始まる。

 

 

ずっと勘違いしたままでいた言葉っていくつかあると思うのだけど、わたしにとっては春一番がそれのひとつだ。
春の暖かい日に優しく吹くから「春一番」かとずっと思ってしまっていた。春一番とか言うくせに実際はずいぶん冬の寒い時期に来るもんだな、なんて思っていたけど、大きな間違いだと知ったのはいつのことだろう。

今の感覚でいう春に吹くものだと思っているから違う感覚を覚えるのであって、旧暦に例えると間違いではないのだ。

立春から春分までの間に、日本海の低気圧に向けて吹く強い初めての南風。

なぜなら立春は今日から始まるから。

旧暦に使われていた言葉が今も残っていて、それが現代ではいまいち伝わりきっていないもの、というのもたくさんあると思う。

これから少しづつ知っていくなかで「へえ」と思うものがあればこちらも合わせて紹介しつつ、自分の語彙力も増やしていきたいな。