七十二候をおいかけて

日本の四季をさらに細かく区切った七十二侯。ひとつずつ知っていきたいと思います。

第二の関門【桃始めて笑う】

啓蟄 3月11日~3月15日
◆初侯:桃始めて笑う(ももはじめてわらう)
◆侯の野菜:新たまねぎ
一年中食べられる印象のたまねぎですが、やっぱりおいしいのは春先でとれる新たまねぎ。ほかの季節よりもぎゅっと水分が含んでみずみずしく、甘みがある新たまねぎは生でもたくさん食べられます。
◆侯の花:桃
桃は桜よりもほんの少し早く開花の時期をむかえます。その歴史はとても長く、弥生時代の遺跡からも桃の核が多く出土しているそう。桃の品種名も「源平桃」などなんだか優美で素敵です。

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第二の関門

嫌いな食べ物や苦手な食べ物は、少しだけ、ある。

食べられなくても人生困らないでしょって思ってしまっているものとか。

そんななかで、たまねぎに関しては「食べる」方面ではなくて「作る」方面で少しだけ苦手だ。

小さなころは、目に染みて泣いてしまうことが嫌だった。

どんなに水にさらしても、どこからともなくつーーーーんと刺激が目に入ってきて、泣きたくないのに涙がぽろぽろ落ちてくる。

涙で包丁が使えないのが嫌でこすると、またしみて泣ける。

つらすぎて水泳用のゴーグルをして切っていたこともあるくらい「やだなあ」と思う”敵”だった。

だけど、いつからだろう。

大人になったから何なのかはわからないけれど、気が付いたらあまり泣かないようになっていた。

もともと、たまねぎを食べることはだいすきである。

ここぞとばかりにたまねぎ料理をした。

そのうち欲が出てきた。

かっこよく千切りのできる女になりたくなってしまったのだ。

いつものように半分に切って、切込みを入れて、「さて」と気合を入れて。

ととととと、と勢いよく切っていた矢先に、今となっては非常に想定内ではあったけれど、包丁が滑った。

つるんと滑って、そのままさっくりと指を切る。

・・・・・・のを、わたしは懲りずに2回続けてやってしまったのだ。

泣くことから卒業は出来たけれど、まだ関門があったわたしは今でもたまねぎだけはとてもとても丁寧に切る。